十綱橋・再び (福島市飯坂町) 2009.11 [TOP] [寄り道] [橋梁Web]
「日本の廃道」第44号に投稿した記事に加筆・修正を加えたものです。
前回取り上げた十綱橋は、
"2ヒンジブーレストリブアーチ"という珍しい形式の鉄橋であった。
しかし基部が両岸とも草木に覆われており、肝心のヒンジが全く見えなかった。
う〜ん、残念・・・。
後日、別件で飯坂温泉を訪問した際に再び十綱橋に立ち寄ってみた。
あれほど繁茂していた夏草も枯れ、隠れていた基部が見えるようになっていたが、
やはりヒンジが見当たらない。
いや、もしかして「見えない」んじゃなくて、「ない」んじゃないのか?
帰宅後、さっそくnagajisさんに写真を見てもらう。 | |
つ 「なんか見えないんだけど・・・」 | |
な 「ん〜、ないハズはないと思うけどなぁ。もしかしてコンクリ漬けになってるのでは?」 | |
つ 「いや、古写真を見るとヒンジは縦材の真下辺りにあるから、中心のピンはともかく、少なくとも軸受けは見えるんじゃないかな?」 | |
な 「なるほど。拡大してよくよく見ると、何か別の部材が張ってあるようにも見えますね。やっぱヒンジあるんじゃないすか?」 | |
---------- なに? ヒンジがあるかも知れないだと? | |
これは気になる。 気になって仕方がない。 | |
というわけでヒンジの原状を確認すべく、まさかまさかの三度目の訪問と相成った。 | |
ヒンジを探して橋の上から覗き込んだ時に見つけたレンガの正体も確認したい、というのもある。
この二点を解決するためにはどうしても河原に下りる必要があるのだが、
土地勘のない野次馬にはなかなか難問である。
下り口を探して橋の周辺をうろうろした結果、
右岸下流からなら"穏便に"接近できそうなことがわかった。
一時は左に見える駅の待合室の窓から抜け出すことも考えたからね(笑)
駅舎と川の間の狭い空間を進む。
体中に植物の種をつけたり、クモの巣に頭から突っ込んだりしながら遂に到達。
十綱橋の橋台はレンガ製だった!
これは大正4年(1915)の竣工当時のものであろう。
レンガ橋台で現役の車道橋というのは非常に珍しい。
管理者や工事関係者の間では周知のことだろうし、特に関心もないのだろうが、
私にとってこれは新発見であった。
下部は勾配が付いた錐形である。
レンガの壁から生えた鉄筋コンクリートの柱はなんだろうか?
風化が進行してボロボロである。
上部は縁が切り石で補強されており、美しい造形を見せている。
その上半分がコンクリート製なのは、橋桁の下に水道管などのバイプを通す工事をした際に
撤去・新造されたからと思われる。
コンクリート護岸の急傾斜を慎重に下り、鉄梯子を上ると目の前にこれ。
ヒンジあったよ、nagajisさんっ!
コンクリに埋められることもなく、鉄板で覆われることもなく、ちゃんとありました。
古写真では丸く見えたけど、実際には六角形だったのね。
この一点に橋本体や、コンクリの路面や、
通行する観光バスやらの重さの4分の1がずしりと乗っかっているわけだ。
そして万が一の時には回転して橋の破損を防ぐ仕掛けなわけだ。
う〜ん、萌えますな。
現在の技術であれば、もっと単純で丈夫な新橋に架け替えることも容易であろう。 | |
しかし本体や橋台を補修しながら、今でも使い続けているのは、 | |
それだけこの橋が地域の人々に愛されているからに違いない。 | |
十綱橋は幸せな橋である。 | |
<ド素人が気付いたマニアックな疑問>
右岸の橋台を下流側から見る。
レンガ部分と石積み部分が鈍角になっているのだ。
理由はなんだろうか? 単なるデザインなのかな?
奥に見えるコンクリから延びるパイプも、橋台から直角にはなってない。
十綱橋は川に対して斜めに横切るように架けられているのだろうか?
左岸の橋台を上流側から見る。
上写真と対角線にあるから、ここも鈍角のはずなのに、直角どころか鋭角だ。
つまり、両岸共に橋台の平面形が平行四辺形らしいのだ。
どうやら川が「ハの字」型になってるのが原因らしいことが分かった。
両岸の橋台が平行四辺形になったのだろう。
設計した人は苦労したんだろうなあ。
これが本当に必要だったかどうかは疑問だけど・・・。
単純に長方形にしたとしても問題なさそうだし、
下流側を膨らませて台形にした方が簡単&楽チンのような気がするし。
下から支えてるのがアーチであることを考えると混乱してしまうが、
アーチと橋台を一体としてではなく、別物として考えると、
ようやくアタマの中で収まりがつく。
アーチの平面形は台形ではなく、長方形のはずだよね?
両端に生じる三角部分は、短いガーダーでも架けて調整したのかな?
ヒンジのラインは、桁とは並行だけど、橋台と並行ではないらしい。
意外と変テコな橋だったんですなあ。