道具の話1・WENGERのツールナイフ-1              2012.04        [TOP]  [物欲]

 

     

   

クラシック

  @   VICTORINOX   58mm   クラシック 赤        栓抜きの比較
  A   WENGER   85mm   ハイカー        上がWENGER(日本式) 引き切り
  B   VICTORINOX   91mm   トラベラーPD        下がVICTORINOX(西洋式) 押し切り
  C   VICTORINOX   93mm   ソルジャー        
  D   VICTORINOX   111mm   センチュリオンNL BK        
                       

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  最初に購入したのはAのWENGERだった。
  1996年8月だから、今から16年前のことになる。 覚えていたわけではなく、レシートが残っていたので判明した。
  そのころ山登りを初め、道具を色々と買い揃えていた時期だったのだろう。
  マルチツールナイフを買う段になり、「どんな種類があって、いくら位するものなのか?」
  と「ナイフ総合カタログ」的なムック本を古書店で買い求め、調べることから始まった。 今ならネット検索で済む作業だ。
  VICTORINOXは知っていたが、WENGERはこの本で初めて知った。 この2社製品を比較すると、
   ・缶切り Vは西洋式の押し切りだが、Wは日本式の引き切りタイプを採用
   ・ハサミ Vは板バネ式ですぐに壊れそうに見えるが、Wは背バネ式で丈夫そう。波刃なのも滑らなくて良さげ
  と言うことでWENGERにすることに決定。 Vに比べてマイナーなので使ってる人が少なさそうな所も気に入った。
   
  ではどの機種にするか。
  コルク抜きはいらない、プラスドライバーがいい。ハサミは日常で使うからあると便利、ってか必須。
  最後まで迷ったのはノコギリを付けるかどうかだった。
  わずか7cmほどのノコギリに何ができると言うのか、しかも1000円も高くなるのだぞ、との理由である。
  結局、「ないよりはあった方が良かろう」という後ろ向きな理由でノコ付きモデルを買うことに決めた。
  それが写真の WENGER ハイカー であった。
   
  次は実売価格調査である。 これも今ならネット検索で済む作業だが、当時そんな環境ではなかった。
  アウトドア専門店、釣り道具のチェーン店などを巡り歩いた。
  それで分かったのが、「WはVに比べてかなり高い」というショッキングな事実であった。
  同等のモデルで比べると、1.5〜2倍くらい高い。
  つまり、Vはド〜ンと何割も値引きしてるのに、Wはほぼ定価という強気の価格で売られていたのだ。
  初志を曲げて安価なVに変更するか、高くても気に入ったWを買うべきか、、、購入計画はしばし停止した。
   
 
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  「どうするべか・・・」とモヤモヤする日々を過ごしていたある日、ひょんなことから5000円の不労所得があった。
  あぶく銭はパーッと使っちまうに限る! と5千円札を握り締めてショップに突入し、いくらか上乗せして、ついにハイカーを手に入れた。
   
  家に帰ると早速開封し、各ツールを出したり畳んだり、紙を切ってみたり、鉛筆を削ってみたりと、ひと通り遊んでみる。
  違うねー。 むかし数百円で買った安物とは全然違う。 切れ味は当然、各パーツひとつひとつの精度が全然違う。
  さすが精密機械の国。 MADE IN SWISS。
   
  保証書を見て気付いたのだが、WENGERの輸入代理店は日本シイベルヘグナーであった。
  ドイツのカメラ「ライカ」の輸入販売元として知られた名前だ。
  「WENGERもライカと並ぶ世界の名機なのだな! ライカはとても買えないけどWENGERなら買えた!」
  とひとりで勝手に興奮したことを覚えている。
   
   
  この精密感、この金属感、この密集感がたまらない   全てのツールを出した状態
  男の機械好きは洋の東西を問わないのであろう   ノコギリは和洋どちらでもない、二等辺三角形仕様
       
  購入して以来、ケースに入れてベルトに下げ、仕事中も外出時も常に持ち歩いた。
  ナイフやハサミは荷物の梱包を解くのに役立ったし、ゆるんだネジがあればすぐにドライバーで締めることができた。
  いちいち「ハサミはどこだ? ドライバーはどこ置いたっけ?」と探さなくていい。
  爪が欠けると服に引っかかったりして煩わしいものだが、ヤスリでササッと削れる。
  使い道のなかったリーマーは、冬タイヤの溝に挟まった小石を取るのに役立った
  一方、わざわざ日本式を選んだ缶切りは一度だけ、栓抜きは飲み会でビールの栓を抜くのに2、3回使った程度、と出番はわずかだった。
   
  さて、悩んだ末に選んだノコギリだが、試し切り以外の出番が全くなかった。
  林道や廃道にて進路を塞ぐ倒木相手には役不足だし、細い枝が邪魔でもいちいち切ったりしない。
  "ソロキャンプで焚き火"なんてことをする人には重宝らしいが私はやらないし、盆栽の趣味もない。
  やはり不用なツールだったのかなあ、と使わないまま10年余りの時が過ぎる。
   
  邪魔者扱いされていたノコギリの出番が来るのは森林鉄道跡の探索をするようになってからである。
  藪の中で距離標や橋台を撮影する際、画面を遮る笹を切るのに役立ったのである。
  ハサミでは太過ぎて切れないし、腰が柔らかいのでナタを振っても逃げられる。
  そこで満を持してついにノコギリが出動! 無事に役目を成し遂げたのであった。
  帰宅後もナイフからほんのりと笹の香りがした。 いとおかし。
 

つづく

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