東日本大震災の記録2 「藤沼ダムの決壊」  福島県 須賀川市(旧長沼町) 2011.03   [TOP]  [寄り道]

   
  このレポートは、2011年5月から「日本の廃道」にて「復興支援号」として無料公開し、福島県内陸部の震災被害を広く知って頂き、
  また、被災地支援の募金のため、任意の金額での購入を呼びかけるために作成したものである。
  お蔭様で5万円を越える義捐金が集まり、その全額を日本赤十字に寄付させて頂いた。
   
  なお、このhttp版公開に当たり、文章の一部を修正、及び画像を追加しています。
   

         
         
  東日本大震災の記録  (福島県 須賀川市)    
         
         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


     
県道29号長沼喜久田線・簀ノ子橋1

県道を南下する途中で偶然通りかかり、妙な違和感を感じて停車した。

当初、なぜ橋の欄干が失われたのか理解できなかったが、

しばらくしてここが決壊した藤沼湖の下流であることに気付いて震撼した。

全ての欄干がもぎ取られ、あるいは下流側に倒れてしまっている。

聞くところによると、押し流された倒木や家は一旦ここで堰を築き、

さらなる増水に耐え切れなくなって決壊し、一気に下流へ流れたとのこと。

 
   

県道29号長沼喜久田線・簀ノ子橋2

欄干の支柱基部。

ナットが付いたままボルトが抜けている。

 

この後、上流にある藤沼湖まで行ってみることにした。

 

 

 


藤沼湖

湖畔を巡る遊歩道の惨状と、すっかり水がなくなってしまった藤沼湖。

 

昭和12年(1937)に着工し、戦時休止を挟んで昭和24年に完成した農業用溜池である。

その後、何次にも渡る改良工事を経て今では自然公園として整備され、

多くの観光客が訪れる場所となっていた。

 

参考画像

 

震災前年である2010年春撮影の藤沼湖。

枝の向こうに見える堰堤が決壊し、これだけの湖水が一気に"抜けた"。

 

 

 

 

藤沼湖周回道路

決壊した堰堤を目指して歩き出す。

道路が陥没しているためクルマでは行けない。

 

 

 

 

 

藤沼湖・本堤西側1

堰堤決壊現場に到着。

堰堤上に設けられた車道が完全に消失している。

土を突き固めたのであろう痕跡が階段状に露出していた。

 

 

 

参考画像

 

2008年に撮影された藤沼湖本堤。

以前より水漏れが報告され、対応が要請されていたと言う。

 

(wikipediaより転載) 

 

 

 

藤沼湖・本堤西側2

植林された木々を薙ぎ倒しつつ、土石流となって斜面を下っていった。

 

迂回して反対側にも行ってみよう。

 

 

 

 


藤沼湖・副堤

駐車場にクルマを止め、坂道を上って湖畔に着く。

副堤も崩落していたが、紙一重で決壊は免れたようだ。

もしこちらが決壊していたら、土石流が長沼の市街地を直撃していた。

 

 

 

藤沼湖・本堤東側

堰堤の一部が切れたのではなく、全体が内側に崩落したようだ。

湖水は右側の斜面を濁流となって流れ下った。

 

さて、被害を受けた下流の集落に行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


藤沼湖下流・滝地区1

溜池の水は右奥から下ってきた。

ここには水田があったのだが表土ごと押し流されてしまい、

地下の岩盤が露出してしまっている。

 

 

 

藤沼湖下流・滝地区2

土石流は橋を飲み込み、簀ノ子川に合流。

橋は残ったが欄干はこの状態となった。

 

 

 

 

 

藤沼湖下流・滝地区3

下流側に折れ曲がった欄干の支柱。

 

 

 

 

 

 

藤沼湖下流・滝地区4

勢い余った土石流は簀ノ子川を越えて対岸の集落を襲い、

民家を押し流して人的被害が発生する惨事となった

 

前出の簀ノ子橋はここから1km下流に当たる。

 

 

 

簀ノ子川流域1

これは工業団地の造成地でも、干上がった川でもない。

ここには水田が広がっていた。

 

 

 

 

簀ノ子川流域2

土砂をかぶりモノトーンになった田圃の中で、ステンレス製の浴槽が光っていた。

前夜、このお風呂に入った人は無事だったのだろうか。

 

 

 

 

寺前橋1

簀ノ子橋からさらに1kmほど下ったところにある寺前橋にも行ってみたのだが、

橋は橋台だけ残して跡形もなく消えていた。

下流を遠望したが、橋桁の姿は見えなかった。

 

 

 

寺前橋2

同所から上流側を望む。

ここには材木店の大きな工場があったのだが、

土台どころか地面ごとなくなってしまった。

川の流路が変わってしまっている。

 

 

 

寺前橋の下流

流出物は滝地区から3km離れた水田にまで広がっていた。

 

土石流はさらに1km下流で堤防擁壁を削り取り、江花川に合流した。

 

 

 


戸渡藤沼林道1

藤沼湖と滝地区の間を舗装された林道が横切っている。

よって濁流の直撃は免れなかったはずで、気になったので行ってみた。

 

所々に深い亀裂の入った舗装林道を慎重に進むと、やがてここに至る。

倒木。 乾いた泥。 浮いて路上に乗ったアスファルト。 そして荒れた谷・・・。

 

 

戸渡藤沼林道2

対岸の様子。

法面が剥き出しになった築堤。 元はどんな状態だったのだろうか。

奥の白いビニール紐のように見えるのは、ガードレールである。

 

 

 

 

戸渡藤沼林道3

上流の様子。

奥の明るく見えるところに藤沼ダムの堤体があった。

 

 

 

 

 

戸渡藤沼林道4

立木に巻きついた倒木やガードレール。

どれだけの圧力が加わったのだろうか。

 

 

 

 

 

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