道具の話26・最近読んだ本・2   2019.12     [TOP]  [物欲]  管理用


             
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2015.06 

         
  「山形県初代県令三島通庸とその周辺」 小形利彦 大風出版   平成25年(2013年)
  図書館を徘徊中に偶然見つけてしまった。 一昨年に出版された三島研究書である。
  未だに新しい研究書が発行され続けてるってのが、三島という人物の凄いところだな。
  万世大路や三島に関する本は見つけ次第目を通すことにしているので、当然これも借りてきた。
  嫌いとはいえ無視するわけにも行かない、当時の重要人物だからね。
   
  著者は山形出身とのことで、予想通り軸は三島賛美である。
  興味深いのは、薩摩閥と地元採用を比較しつつ三島の人事を検証したり、
  さらに、三島の片腕として常に行動を共にし、頻繁に名前を見かける割りには今ひとつ履歴や功績が不明であった、
  高木秀明にも一章を割いている点である。
  また、栗子隧道開削工事を語る際に必ず触れられる、世界に3台しかないアメリカ製の削岩機のイラストや使用方法も掲載されていた。
  私は今まで蒸気機関車のような巨大な鉄の塊を想像していたのだが、実際には「えっ?」と驚くほど小型な機械だったのは意外だった。
  かつて常磐炭鉱の切羽で鉱夫が使っていた削岩機と、ほとんど変わらない形状をしていたのだ。
  やや肩透かしを喰らったが、ノミやツルハシで手掘りするのが普通だった時代なので、
  硬い岩盤にガンガンと穴を開けて行くこの舶来マシンは革新的だったのだろう。
   
  当時の測量技師による、「栗子山隧道は曲げたのではなく、曲がってしまったのだ」という証言も貴重。
  「やっちまった〜・・・」と焦った誰かが、「こ、これは雪が隧道内に吹き込まないようにするための工夫でして・・・」と言い訳でもしたのかな?
  それが結構な高官だったために、「真実」として後世に残ることになってしまったのかも。
  案外、高木秀明だったりして(笑)。
   

       
 

2017.02 

     
  「福島県の道路元標」 小泉明正 歴史春秋社   平成27年(2015年)
  かつて、「日本の廃道」2016年8月号の編集後記に、私は以下のようなことを書いた。
 
    1年ほど前に「福島県の道路元標」という本が出ていたことを最近になって知った。
    こんなピンポイント、かつニッチな本が出版されたことに、まず驚いた。
    大判でページ数も多いので、お値段はやや高めである。
    図書館にも置いてあったので借りようと思ったが、なんと貸出中。
    私以外にも地元の道路元標に興味を持っている人がいたとはっ!
    嬉しいことだけど、早く読みたいから早く返してください(笑)。(つ)
   
  しかし、図書館が改修のため長期休館中ということもあって、ずっと借りられずにいた。 
  仮設図書館にも蔵書されなかったので、どっちみち借りようがなかった。
  いずれ買うつもりでいたものの、新品だと3000円と少々お高い。
  そこで、安めの中古本が出るのをずっと待っていたわけだが、先日ついに半額で出品されているのを見つけた。
  「どんだけボロ本なんだろ?」と思ったら、「ほぼ新品」で、しかも「送料無料」。
  めちゃくちゃ好条件だなあ、と出品者を見てみると、Amazonアウトレットだった。 ラッキー!
  これなら間違いなかろうと、すぐさまカートに投入。 購入と相成った。
   
  発注の数時間後には発送。その2日後に届いた。 九州からの発送で、このスピード。 恐るべし。
  届いた本は本当に「ほぼ新品」で、カバーに多少スレがある程度だった。
  ウラに「検品済」のシールが貼ってある。
  補充カードも付いたままで、手書きで小さく書名が書いてあった。
   
  さて、内容である。
  この本の、というか、この作者の凄いところは、道路元標が設置された"全ての"ポイントを訪れ、 
  標柱が現存するしないに関わらず、その場所を撮影している点である。 その数、約400箇所! 
  古い設置リストに掲載された旧住所から現住所を割り出し、地元住民に取材しつつ、標柱を探す、 
  という大変な努力と手間を掛けた末に完成した労作だ。 
  福島県は広いからね。 
   
  副題として「〜里程元標・一里塚〜」とある。 
  「福島県の一里塚」と聞いたら黙ってはいられませんわな。 何といっても、当「街道Web」の原点ですから。 
  結論から言うと、こちらは有名どころをサラリを巡った程度で、道路元標に比べるとかなり扱いが低く、オマケ感が強い。 
  でも、歩いてしか行けない束松の一里塚まで登っていたり、一対で残っている一里塚をリストアップしてたり、と熱意は感じる。
  杉ノ沢の一里塚が抜けてるけどね(笑)。
  「今後も調査を継続する」とあるので期待しよう。 
   

             
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2017.06 

           
  「風船爆弾」 吉野興一 朝日新聞社   平成12年(2000年)
  毎年、終戦記念日が近くなると、ローカルニュースで県内各地の戦跡が紹介されたりする。
  いわき市勿来にあった風船爆弾の放球場跡が取り上げられたこともあった。
  それをきっかけとして何気なく検索してみたところ、勿来駅から放球場に続く専用線が存在していたことを知り、
  しかも僅かではあるが、遺構が残存していることも分った。
  で、風船爆弾についてもう少し詳しく調べてみようと、図書館から借りた本がこれだった。
  高度維持のシステムとか、気象条件とか、和紙の話とか、そういうのは興味ないんだけどなー、と思いつつ、
  でも、仕方なく読んでみたら、これが意外と面白くて凄く勉強になってしまった(笑)。
   
  是非手元に置いておきたい本だなあ、とAmazonにて古本を調べてみたのだが、程度の良いものが少ない。
  でもまあ、安いので、送料込みで300円以内になったら買おう、と値下がりを待ち構えていたら、寸前で売れてしまい、買い損ねてしまった。
  いったい何度目だ、こういうの・・・。
  それからが結構長かった。 中々値下がりしてくれないのだ。
  実は以前、Amazonで「可」を買ったら想像以上に酷い本が届いてガッカリして以来、「可」には手を出さないようにしていたのだが、
  程度が良いのは高値のまま安定してるので、今回は仕方なく「可」を買ってみた。
   
  届いた封筒を恐る恐る開ける。
  「可」ってことは、カバーはシワくちゃで所々破れ、汚れてシミもあり、中も折れたページが・・・というのを覚悟していたのだが、手に取ってみて驚いた。
  「良い」でも「非常に良い」でもなく、「ほぼ新品」だったのである。
  カバーは綺麗で、しかも帯まで付いている。 よくよく見れば背が少しヤケているかも、という極上品。
  付箋のヒモは使った痕跡があるので一度くらいは読まれたようだが、そのまま本棚で肥やしになっていたのだろう。
  これが「可」で、しかも送料込みで300円で買えて超ラッキーであったが、まあ、出品者の評価ミスだろうね。
  毎回こうだ、と勘違いしちゃうと、痛い目に会うに違いないとは思っている。
   つづく

               
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2019.12 

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  「プロ並みに撮る写真術 3」 日沖宗弘 勁草書房   平成8年(1996年)
  カメラや写真関連の単行本、雑誌、ムックや写真集はかなり所有しているが、これまで「物欲Web」で取り上げたことはなかった。 
  しかし、この本には触れないでいられない。 「誰かに紹介したい」というよりも、自分自身の消化のため、という気持ちが強い。 
   
  出版されたのは30年ほど前で、「1」は平成3年(1991)12月、「2」は平成5年(1993)11月に出ており、当時新刊で購入していた。 
  シチュエーションや被写体別に、ボディやレンズの選択を具体的にガイドしているのが面白く、参考になる本であった。 
  特にレンズには大変な拘りを持っているようで、極めて優秀なレンズ、国産の優秀なレンズ、が列記してある。 
  そして、筆者が世界各地を旅して撮影した作例写真が(モノクロであるが)、多数収録されている。 
  結構、影響を受けた本であった。
   
  その後は長らく押入れで眠っていたのだが、30年余り経過した最近になって発掘。
  マニアックな内容で、ハードカバーの単行本なので、現在はどれほどの価値があるのだろう?、と期待して検索したところ、
  100〜200円の捨て値で売られててガックリ・・・。
  しかし、続刊として「3」「4」が出ていることに初めて気が付いた。 
  というか、それほど好きな本なのに、30年近く続刊の存在を知らずにいたわけだ。
  「どんな内容なのかな?」とレビューを見てみると、「1、2は良かったけど3、4はダメ」とのこと。 あれれ?
  中には「奇書」との評価もあった。 いやいや、いくら何でも"奇書"って・・・。
   
  早速買ってみた。
  今回は、BOOK OFF Online で注文し、最寄りの店舗で受け取った。 なので送料無料。
  帯付きだったけど、1、2にあったビニールカバーは無し。 失われたのか、最初からないのか不明。
  読み始めて、当初はニヤニヤしながらだったけど、次第に読むのが辛くなり、結局最後まで読めなかった。
  著者曰く、「外食したら、体調不良になった。どうやら毒を盛られてるらしい」、
  「反クラシックカメラ組織の一員が家に侵入し、カメラに細工された」、
  「尾行されている」、「盗聴されている」、などなど、被害妄想と陰謀論が次々に繰り出される。
  1、2と違い、写真術でも何でもない本に激変していたのだった。
  で、気味悪くなって読むのを止めてしまったのだ。
   
  また、作例もネコの写真ばかりになってしまった。 おそらく自分の飼い猫を屋内や近所で撮影してるのだろう。
  しかも、コントラストが低くてぼんやりした、ピントもふわっとした写真ばかりだ。
  これではレンズの良し悪しなど分からないではないか。
  ネコの観察日記が延々と続くのにも参った。
   
  こんな内容の「3」に続いて、「4」も出版されている。
  自費出版でもないのにね。 初めから4冊出す、との契約でもあったのだろうか。 
  100〜200円くらいなら買ってみようかな。
   

             
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2020.08 

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  「プロ並みに撮る写真術 4」 日沖宗弘 勁草書房   平成11年(1999年)
  と言うわけで、BOOK OFF Onlineにて100円になったので購入。
  届いた本の状態は新品同様で、どうやら一度も読まれてなさそう。 しおりの紐が全く使われてないように見えた。
   
  さて内容だが、いきなり哲学とか宗教について語り始めて辟易する。
  そんなページはサクッと斜め読みするわけだが、所々に作例写真が入っているので注目。相変わらず低コントラストやピンボケが多い。
  中には死んだ飼い猫の写真があって、ちょっと驚かされた。 悲しみは分かるけど、そういうのはプライベートでやって欲しい。
  筆者が「3」よりさらに"写真術"から離れ、私的、心象的な内容に傾いて行ってるようで、悪い予感しかしない。
   
  実をいうと、後半にはもっとショッキングな写真が掲載されている。
  またしても草むらに寝かされた死んだ子猫の写真が出てくるのだが、その隣に白骨化後の写真が並んでいるのだ。
  文面からの推測だが、筆者は、徐々に腐乱し、白骨化してゆく様子を観察し、カメラに記録していたようだ。
  個人的には随分と悪趣味のように思えるが、愛猫家とはそういうものなのだろうか。
  まあ、グロい写真なのだが、例によってコントラストが低いせいで、いくらか抑制されている。
   
  本の半分は内外各レンズの評価で埋められていて、その点は原点回帰として評価できるのだが、
  残念ながら「1」のように細分化されておらず、目次もなく、箇条書きが延々と150ページも続くので、
  読んでいて全然楽しくない。と言うか、読む気にならない。
  "これ"が読みたかったのにな。
   
  写真やカメラ・レンズには全然興味ないが、奇書には興味ある、という方は「3」、「4」"だけ"をお勧めする。
  筆者さんは、今どこで何をしてるのだろうか・・・。
   

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