道具の話3・ヤフオクで落札してみる-1              2012.05        [TOP]  [物欲]

 

 

   

新ソルジャー

 
  @   VICTORINOX   58mm   クラシック 赤   2008年から新しくスイス軍に採用された新ソルジャー
  A   WENGER   85mm   ハイカー    
  B   VICTORINOX   91mm   トラベラーPD    
  C   VICTORINOX   93mm   ソルジャー    
  D   VICTORINOX   111mm   センチュリオンNL BK    
                   

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  「新しいナイフを買おうかな」と思った。
  ハイカーが不要になったわけではなく、これはこれとして今まで通り使い続けるが、もっと軽量コンパクトなモデルが欲しくなったのだ。
  WENGERには現在どんなモデルがあるのかネットで検索してみた。パソコン購入以来初めてのことである。
  するとなんと、WENGERはあろうことかVICTORINOXの傘下に入っていた・・・・。
  しかもそれは随分と前の2005年の出来事だった。それを今の今まで知らずにいたことも合わせてダブルのショックであった。
  WENGERのハンドルは形状が変わり、さらに新しいモデルでは滑り止めまで付くようになっていた。
  私のハイカーは2世代も前のものになっていたのだ。
  種類も以前と比べてかなり縮小され、公式サイトは非常に寂しい状態であった。
   
  さらに加えて驚いたことは、スイス軍用ナイフもモデルチェンジしていたことだった。
  それが2008年の事であったことも初めて知り、3つ目のショックも同時に受けた。
  それほどまでにこの業界に無関心であった者が今、こんな文章を書いているのだ。
   
  新しいスイスアーミーナイフには大型のものが採用されていた。
  Dと同じ111mmモデルである。
  「まさか"アレ"が軍に採用されるとは・・・」とかなり意外であった。
  ・つや消し赤のハンドルがどうもカッコ悪い。(以前は赤しかなかった)
  ・ハンドルの社章が下位モデルと同じ刻印なので、安っぽい。(現在はプリント)
  ・大きい、重い、高い。
  それが今では黒もあり、さらに複合素材もあり、赤黒なんていう派手なハンドルも出ていて、
  いつの間にか垢抜けたモデルに進化していたのだ。
   
  それより少し前、私の目はある動画に釘付けになっていた。
  バイクでツーリングして、テントを張り、食事を作って、焚き火をして寝る、というだけの動画なのだが、
  料理をする際、包丁代わりに使われていたのが赤い111mmモデルだったのだ。
  動画の主は、その「ダサい」ナイフを鮮やかに使いこなし、実に手際よく食事の下ごしらえをしていたのだ。
  その手慣れたナイフ捌きに心を奪われ、「111mmモデルもいいかも・・・」と傾いていたのだった。
   
  111mmモデルは「黒、ライナーロック、シンプル、コルク抜き不用」ということで「センチュリオン」をアマゾンの「ほしい物リスト」に登録。
  栓抜き・缶切りもいらないのだが、そんなモデルは日本の公式サイトにはない。(海外にはある)
  (後で分かったことだが、センチュリオンはオランダ軍に採用されたモデルでもあった。)
   
  その一方、公式に「時代遅れ」の烙印を押されてしまった旧ソルジャーも急に気になり出した。
  軍への納入がなくなったことでコストもアップするするだろうから、
  もしかするとアルミハンドルのモデルは値上げ。もしかしたらなくなってしまうのではないか、との危惧もあった。
  すでに軍用タイプはカタログ落ちしてるので、民生モデルである「パイオニア(日本では「ソルジャーCVAL)を登録。
  軍用はハンドルにスイス国章が付いているが、民生用のは他の市販モデル同様、VICTORINOXの社章が入っている。
  登録するくらいだから当然欲しい。でもどうせ買うなら民生モデルではなく、軍用が欲しい。
  でも軍放出品には熱心なミリタリーマニアがいて、高値で取り引きされてそうなイメージがある。
  相場を確認すべく、YAHOOオークションを見てみる。ヤフオクなんてやったことがないので見るだけのつもりだ。
  あれ? 新型はさすがにまだ高いが、旧型は結構安い。
  どうやら市販されたものが大量に市場に出回っていて、軍用品と言えども特にレアでもないようだ。
  どうせボロボロになるまで使うんだから中古品でいい。その方が安いだろうし。
  汚れを落として油を注してピカピカに磨いてやれば愛着も沸く。
  と言うわけで、初めてのオークション、初めての入札、ドキドキの落札、ハラハラの入金、と手順を踏む。
  以前は出品者と直接メールでやりとりしてたと思うが、今はAmazonで買うのと大差ないシステムに変わっていた。
   
     

   

2006年製の旧ソルジャー

センチュリオン

センチュリオン

 
6                
  そして数日後に届いたのが、「06」の刻印があるスイスアーミーナイフ、ソルジャーであった。これがCである。
  2006年製を示す。 民生モデルにはこの数字がない。
  2006年、スイス軍に入隊した新兵に配布すべく作られたものだが、市販もされていた。
  ハンドルを含め、全てのパーツが金属製。 そのせいで小さい割りにはズシリと重い。
  どんなに乱暴に扱っても割れることがない、飾りっけなしのアルミ製ハンドルが鈍い銀色に光る。
  50年前のデザインとは思えない、シンプルな美しさがあった。
   
  しかし困ったことに、届いたソルジャーは新品同様であった。
  きれい過ぎて、もったいなくて使えない・・・・。
  コレクターじゃないのに、観賞用じゃないのに、ハードに使うために買ったのになあ・・・。
  この時、すでに歯車が狂い始めていた。
   
  数日後、今度は111mmモデルのセンテュリオンを落札した。それがDである。
  これはハンドルが傷だらけで、正真正銘の中古品であった。
  安かったし、これなら心置きなくガシガシ使える。
  111mmモデルはブレードを含め、全てのツールが肉厚になっており、いかにも無骨な感じがした。
  しっかりとブレードをロックしてくれるため、安心して使える。安いが「安物」ではないのだ。
  段ボールを解体したり、パンを切ったりと、硬軟それなりに活躍中である。
  屋内配線の際にリーマーを使おうとした時、急いで開けたので指をザックリ切ってしまったりもした。
  鋭利であることは心得ていたのだが、これほどの切れ味とは思わなかった。 恐るべし・・・。
  触ってもないのに嫌っていた111mmモデルだが、なかなか使える道具であった。
   
  気になる点もあった。
  ・プラスドライバー、リーマーのバネが強過ぎる。(逆にブレードはロック機能があるためか弱い)
  ・ハンドル素材が柔らかいため、強く押されるとアルミ製のライナーが変形してしまう。重くなっても鉄かステンレスにして欲しい。
  ってところですかな。
 

つづく

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