道具の話4・ヤフオクで落札してみる-2              2012.05        [TOP]  [物欲]

 

 

2008年からスイス軍に採用された新型

新ソルジャー

   
  @   VICTORINOX   58mm   クラシック 赤
  A   WENGER   85mm   ハイカー
  B   VICTORINOX   91mm   トラベラーPD
  C   VICTORINOX   93mm   ソルジャー
  D   VICTORINOX   111mm   センチュリオンNL BK
               

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  旧ソルジャーは1961年にスイス軍に正式採用された。
  製造はVICTORINOX社とWENGER社が行い、それぞれが半分ずつ軍に納入することになっていた。
  軍による厳正な仕様書の元に生産されていると思いきや、
  実はどちらの会社で作られたものなのか、ひと目で分かるほどの差異がある。
   
   
  なぜか知らないが、私の手元にいつの間にかVICTORINOX社とWENGER社の旧ソルジャーがあった。
  買ったばかりでロクに使ってもないのに、同じナイフを更に買い増しするバカがここにいる。
  左右ともに上がV社、下がW社のものである。
  それぞれ製造年を示す「06」「01」とあるが、W社の数字はやや小さく、フォントも異なる。
  80年代のW社は打刻だったらしく、数字が荒々しい。コレクターには人気のようだ。
  製造年の裏側にはそれぞれの社名や、製造国名、素材などが刻印されている。
   
  左の写真を見て分かるように、V社のソルジャーにはキーリングがない。
  W社はハンドルを貫く大きなDリングが付いている。 これが大きな違い。
  V社にはパイオニアと同じタイプのキーリングが付く旧ソルジャーも少数ながらある。
  国章と製造年があるので軍用だったと思われるが、余ったパーツで作ったモデルとの見解もある。
  レアなのでコレクターには人気があるようだ。
  他にも「パイオニアを修理に出したら製造年付きブレードになって戻ってきた」とか、
  新品の時から製造年が入ってるパイオニア、なんてのもあったそうで、厳密な分類は難しいようだ。
   
 

リーマーの比較 左のV社は丸く、右のW社はL字型

パイオニア(日本名・ソルジャーCVAL) 社章とキーリングが付く

ソルジャー

   
  小さな相違点ではリーマーの形状がある。
  断面形がW社は円弧状だが、V社はL字型なのだ。
  これは特にどちらの方が良い、ということもない。
  両社が統合された2005年以降はパーツもV社のものに統一化されたらしく、リーマーは同じ形状になっているとのこと。
  WENGERらしさがなくなった、と残念がるユーザーもいるようで、コレクターにとって新しいモデルは人気薄のようだ。
  他に、V社の方がハンドルの滑り止めのヤマが鋭角。W社の方が国章周りの空白が狭い、
  という些細な差異も発見した。
   
  以上で旧ソルジャーに関する薀蓄は終わり。
  両社の差異を実際に確認し、書き記すため"だけ"に同じナイフを2本買った勇者に幸あれ。
  さて、役目を終えた2本のソルジャーをどうしようか・・・。 オクに出すか・・・。

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  さて、兵卒(ソルジャー)用のナイフが採用されたVICTORINOXは、次に士官(オフィサー)用のナイフを試作した。
  しかしこれは不採用となったため、民生モデルとして市販されることになった。
  これが後にV社の主流商品となる、91mmモデル「オフィサー」の萌芽であった。
  今でもブレードの根元にはOFFICIERとの刻印がある。
  ソルジャーが軍用、オフィサーが事務用、という意味かと思ったら、実は両方とも軍用だったわけだ。
  と言うわけで、やはりヤフオクで落札した91mmモデルがトラベラーPD。Bである。
   
   

トラベラーPD

 

トラベラーPD

   
  トラベラーのコルク栓抜きを廃し、代わりにプラスドライバーを付けたモデルがこれ。
  私のはかなり古いモデルのようで、マルチフックが付いてない。
  しかもドライバーの先端が二股に割れている。
  これは「小さめのネジ穴にもピッタリとドライバーをフィットさせるための工夫」とも、
  「コンビーフの缶を開けるための溝」とも言われており、使用法は確定できてない。
  最近のモデルではこの切り込みが廃止されてるから、強度不足になるだけで実際にはあまり役に立たなかったのだろう。
   
  以下、W社のハイカーと比較しての感想。
  ・メインブレードを始め、各ツールが分厚くて丈夫そう。これは意外だった。
  ・華奢に見えたハサミも特にそんなことはなく、しかもよく切れる。
  ・スモールブレードが、期待通りカミソリのような切れ味だった。
  ・押し切り型の缶切りは未使用。今後も使う機会はなさそうだ。
  ・キーリングの穴の仕上げが雑。
   
       

V社 91mm W社 85mm V社 スタンダードNL 84mm

ティンカー

   
  V社が91mmでオフィサーシリーズを展開した一方、後発のW社はやや小さい85mmで民生モデルを販売した。
  そのキャッチコピーが「世界一小さい道具箱」だった。
  「世界で2番目」となってしまったV社はイラッとしたのだろうか。
  W社より1mmだけ小さい84mmモデルを「スモールオフィサー」として新たにシリーズ化した。
  このモデルが市場でどのような評価を受けたのか詳しいことは分からないが、
  現在の寂しいラインナップを見ると必ずしも盛況というわけではないようだ。
  しかしV社に91mmより下位のモデルができたことにより、それと同サイズのモデルをメインとするW社に対して、
  「V社より格下。91mmが上位」というイメージを図らずも植え付けることになったのではなかろうか。
  W社の凋落ぶりを見るとそんな気がしてくる。
 

つづく

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