道具の話6・本と地図                  2013.03        [TOP]  [物欲]

 

  2013.03  
     
  「津波と原発」 佐野真一 講談社  
  TBSアナウンサーの小島慶子がパーソナリティをしているラジオ番組「キラ☆キラ」のブログで、彼女自身が紹介してるのを見て知った。  
  さて、詳しく話すと長くなるので端折る。  
  Perfumeが好きになり、全然売れてなかった頃から推していたライムスター・宇多丸を知り、  
  宇多丸がパーソナリティを勤めるTBSラジオ「ウィークエンド・シャッフル」を聴くようになり、  
  彼がレギュラー出演するようになった「キラ☆キラ」も聴くようになり、そこで小島慶子の男前なキャラを知って好きになった。  
     
  「キラ☆キラ」は月〜金の生放送で、とある金曜日の放送が終了する直前、TBSのスタジオを大きな地震が襲った。  
  東日本大震災だった。  
  激しく揺れるスタジオの中で彼女は緊急放送を続けた。 その瞬間の様子はTBS「情熱大陸」でも放送された。  
  その後、ブログで紹介された本のひとつがこれだった。  
     
  やがて小島は番組スタッフと方針を巡って対立して番組を降板。 楽しみにしていた「キラ☆キラ」も終了した。  
  やがて件のブログも削除されてしまった。  
  現在は活動の場をテレビに移し、毒舌キャラとして活躍しているが、ラジオでの鋭い舌鋒は封印されており、急速に興味を失った。  
  最も悔しい思いをしているのは彼女自身であろうが、これがテレビというマスなメディアの限界なのだろう。  
     
  で、本の感想だが、政府に腹が立つ。自民党に腹が立つ。県に腹が立つ。読売新聞に腹が立つ。西武に腹が立つ。東電に腹が立つ。etc  
  そんな本であった。  
  当然ながらテレビは一切報じない。 日本には報道の自由もなければ知る権利もないんだな。  
  (そういや記者クラブ制度批判で有名な上杉隆も「キラ☆キラ」のレギュラーだったが、途中から出禁になった模様)  
  これだけ金と権力がある組織が「どうやったら国民を騙せるだろうか」と結束して画策したら、そりゃ神話も生まれるってもんだ。  
  騙そうとしてることは重々承知の上で、札束の山に平伏した個人や自治体もあるのだろう。  
  双葉町なんてのは原発への過剰な依存が祟って財政破綻し、そこから脱出する政策として、またしても原発に依存しようと目論んでいた。  
  国策に翻弄される小さな田舎のムラで起こった、可笑しくも悲しい末路である。  
  朝日新聞の「プロメテウスの罠」も読まなくちゃいかんなあ。  
     
  2013.04追記  
  とかなんとか言ってたら、4月から小島慶子のラジオレギュラーが始まった。  
  しかもニッポン放送で! それも「オールナイトニッポン」  
  ファンは嬉しいけど、TBSサイドはざわざわするだろうな(笑)。  
  去年スペシャルで一度だけやった時もそんな空気だった。  
     
  早速聞いてみた。  
  ゲストなしのひとりしゃべりに違和感があるが、まずまず面白かった。  
  初回なのでまだバタバタしてるのはまあ仕方がないとして、「キラ☆キラ」時代の常連リスナーも戻って来ていたから、  
  これから回を重ねるごとに徐々に固まってくるだろう。  
 
 
     
  「からくり民主主義」 高橋秀実 新潮文庫 (単行本は草思社)  
  これも上記同様「小島物件」である。  
  Amazonにて単行本が1円で出品されていたので注文したら、文庫本が送られてきた。  
  「間違えました」とのことだったが、小さくて持ち歩ける文庫本の方が人気があるのか高価なので、まあ良しとした。  
     
  この本を面白いと感じ、ニヤニヤしながら読んでる私は相当に意地が悪いのだろう。  
  取材対象を「鋭く批判」というより、「言いたいこと言わせておいて嗤う」といったスタンスが小気味良い。  
  「あなた、ドヤ顔で人に説教たれてますけど、相当ズレたアタマ悪いこと言ってますよ。バカの自覚はないんでしょうけど」  
  と指摘したくて仕方がないが、いつも我慢してる人にはタマラン本なのではなかろうか。  
  私の場合、我慢できずに口に出してしまうので、教師に嫌われ、級友に嫌われ、上司に嫌われ、同僚に嫌われる。  
  で、今さらになって気付くのだ。 「あれ? バカの自覚がなかったのはオレか?」、と。  
  本当に利口な人は本音を言わないのだ。隠すのだ。  
  しかし、気付いた時にはもう、回りに誰もいなくなっていた。  
     
  単行本の初版は平成14年(2002)。 10年以上前だ。  
  今は2ちゃんねるとかtwitterのお陰で、その気になれば「自覚のないバカ」をいくらでも好きなだけ見つけることができる。  
  実社会でもそうだが、ネット上であっても声が大きいだけ、手数が多いだけの意見が多数派に見えてしまうことに変わりはない。  
  いや、むしろ補強されたか。  
     
  「米軍基地反対!」「原発反対!」といっても、色々と"種類"があるらしい。  
  マスコミが来ている時だけデモに参加する人。地元とは関係のない見知らぬ団体。  
  強硬に反対すると補償金が上がるから、との理由で反対派の存在を頼もしく思ってる人。  
  賛成派の意見を報道せず、反対一色であるかのようにミスリードするマスコミ。  
  やっぱり自分の目で見て、自分の耳で聞かないとイカンのだなあ。  
 
 

 

  2013.04  
     
  「ベトナム戦記」 開高健 朝日文庫  
  前ページで「読みたい」と言ってたのだが、古書店にも図書館にも置いてなくて伸び伸びになっていた。  
  Amazonの古本もなかなか下がらなかったのだが、70円まで下がったところでポチッってみた。  
  文庫化されたのは彼の死後なんだな。  
     
  ベトナム戦争モノは学生時代に「戦場の村」(本田勝一)「南ヴェトナム戦争従軍記」(岡村昭彦)を読んで以来ではなかろうか。  
  大学の図書館に「朝日ジャーナル」が創刊号から全巻揃ってたので、戦場ルポを拾って読んだりもしてたっけな。  
  当時朝ジャの編集長をしていた筑紫哲也が、まだいち新聞記者だった頃のルポがあったような記憶がある。  
  この「ベトナム戦記」は同じ朝日でも「週刊朝日」の連載をまとめたものだから、読むのは全くの初めてである。  
  そういや写真集では沢田教一が撮った「泥まみれの死 」を今でも時々開くことがあるな。  
     
  彼は英語仏語が堪能のようで、ベトナムの市民、軍人やアメリカ兵の各証言、というか雑談が非常に生々しい。  
  兵士らは何のために、誰と戦ってるのか分からないまま嫌々戦い、逃げ惑い、ジャングルの中で泥に塗れて死んでいった。  
  従軍した大隊が解放戦線のワナに嵌り、ほぼ全滅になる日の記述はまるで映画の1シーンのように映像として目に浮かんだ。  
  第二次大戦終了後もベトナムに残り、解放戦線側の軍事顧問となってフランス軍と戦っていた元日本兵の逸話が興味深かったな。  
  面白い本はあっという間に読んでしまう。もっと面白い本は、もったいないのでわざとゆっくり読む。  
  この本は後者であった。  
 
 
     
  「県別マップル 道路地図 福島県」 昭文社  
  今年の版が出ていた。  
  表紙に「震災対応版」とあったので何が違うのかと見てみると、津波の浸水範囲が図示してあった。  
  さらに福島県の場合、進入禁止エリアが多数あり、役場や学校には「(移転)」という但し書きが目立つ。  
  これが他の被災地と福島が決定的に違うところで、この状態があと何十年も続くのかと思うと地図を見るのが辛くなる。腹も立ってくる。  
     
  現在私が使用中のものは2003年版だから、10年前に出版されたものになる。 だいぶ古い。  
  写真のように角が摩滅して丸くなり、表紙もボロボロだ。  
  その10年間に発生した国道、県道のルート変更やバイパス開通、新道開削が反映されてないので、現地に行って初めて「えっ!?」となる。  
  そう簡単に新刊に切り替えられないのには理由がある。 10年使い続けてきた間に、色々と書き込んだ履歴の積層がハンパないからだ。  
  旧街道のルート、一里塚や道標や几号水準点や道路元標の位置、廃された林鉄や炭鉱線のルート、古い建物、発電所跡、etc。  
  ないと困るし、2冊持って歩くのは面倒だし、全部書き写すのはもっと面倒だ。  
  さあ、どうしようか・・・。  
 
 

 

  2013.04  
     
  「トワイライトゾ〜ンMEMORIES 1 ネコ・パブリッシング  
  出版されたのは2005年。 発売前から知っていて期待していたし、実際に店頭で手に取る機会もあったのだが、  
  デカい! 重い! 高い! 2800円もする! そして何より、福島ネタが少なかったので買わなかった。  
  そのまま忘れていたのだが、去年辺りからヤフオクやAmazonでチェックするようになった。  
  流通しているのは古本ではなくバーゲン本が多い。どうやら大量に売れ残ったらしい。  
  1000円前後だと買い手が付くが、1200円以上だと流れる、といった相場だった。  
     
  先日Amazonで「トワイライトゾ〜ンMANUALを検索したら、「トワイライトゾ〜ンMEMORIES 1もヒットした。 しかもなぜか2枠ヒットした。  
  片方は「ほしい物リスト」に登録してあるお馴染みの枠だったが、もう片方は未知の枠だった。 しかもこちらのほうが安い。  
  Amazonってところは時々これがあるから油断ならないんだよなあ・・・。 「バーゲンブック」は別枠らしい。  
  在庫は1冊のみで早い者勝ちだったのだが、1日2日様子を見て、それでも残ってたのでポチッとした。  
  3日ほどで届いたそれは新品同様であった。  
     
  Amazonでは数日前にも「トワイライトゾ〜ンMANUAL12」を買っていた。  
  こちらは送料込みで300円と超激安であった。  
     
  内容に対する感想は、、、、まあエエやろ。 まだ全部読んでないし、必要な箇所だけ拾い読みすればいいんだし。  
 
 
     
  「国道の謎」 松波成行 祥伝社新書  
  曲がりなりにも道路系のサイトを運営していて、それも10年になるというのに、この本を今頃読んでるってどういうことよ?  
  と呆れたり嗤ったりしてる方もおられるかも知れない。  
  しかし! 今ごろ開高健を初めて読んで感激しているクラスの人間となると、そんな嘲笑など蛙の面にナントカなのである。  
     
  初版は2009年。 当時、発売前からこの界隈では話題になっており、私もそれなりに関心を持っていた。  
  「『日本の道』の管理人さんが本を出すらしい。しかも新書版らしい」と。  
  道路系のムック本は各種出ていたが、新書は初めてだったと思う。  
  その後店頭で見つけて「あ、これか」と手に取ったが、あって当然と思っていた国道289号・八十里峠がないのでパスしたのだった。  
  「後で中古本を安く買おう」とすら思わなかったような気がする。 福島ネタが皆無だったからね。  
     
  今さらになって買い、読み始めてすぐに「なぜあの時すぐに買わなかったのか!」と激しく後悔したことは言うまでもない。  
  この本は変わった国道を取り上げて紹介するだけの本ではなく、道路行政史誌とも言えるとっても深〜い本だったのだ。  
  そんなことに最近になって気付き、慌てて買って慌てて読んだわけだ。  
  そんなこんなで「上から目線で批評」なんてとてもとてもできません・・・。  
 
 
     
  「鉄道と国家」 - 「我田引鉄」の近現代史 小牟田哲彦 講談社現代新書  
  「国道の謎」が"道路行政史誌"ならば、こちらは"鉄道行政史誌"と言えようか。  
  サブタイトルにあるように、やや負の側面を追ったものとなっている。  
  そして、国鉄を喰い散らかした政治家の名前が実名でどんどん出てくる。  
  その多くが「悪い事をした」という罪の意識が全くない。 それどころか地元では今でも英雄である。  
  人のいない小さな村に、政治力で鉄道を引く、曲げる、停める。  
  そんな例が次々と紹介されている。  
  逆に、過疎の村における鉄道の重要性や、駅の果たす公共的な役割についても言及されている。  
     
  只見線は復活するのか。常磐線は換線&全通なるのか。郡山市内に新駅が開設されるのか。  
  身近で進行中の鉄ネタも気になっている。  
 
 

 

   

 
 

2013.05

     
     
  「信夫の史蹟めぐり」 高橋貞夫 歴史春秋社  
  書店にて偶然この本を見つけた。新刊である。  
  石碑やら石橋から石垣、船場跡まで「史蹟」の対象は広範で、中には未知の事柄も含まれていた。  
  これは買いだ。そのうち買おう。でも忘れないようにブックマークしておこう。  
  と、帰宅後にAmazonにて検索したが見つからず。  
  仕方がないので歴史春秋社のサイトに行ったが、信じ難いことに出版元のサイトにすらなかった。  
  書店にはあるのに、ネット上には存在しない本なのだ。  
  著者名で検索すると、既に何冊か書いておられる方のようでAmazonではヒットする。  
  しかし出版元である歴史春秋社では、やはり「一致する商品なし」と出る。  
     
  書店の棚にて偶然見つけることでしか購入することができない本が存在する。  
  ネット通販が流行り、街中から書店がどんどん消えているが、やはり書店は必要なのだ。  
     
  2013.08 追記  
  Amazon、歴春のサイトにて掲載を確認。 これを書いた一週間後くらいに掲載された模様。  
 
 

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