猪苗代森林鉄道 (デコ平〜ヤケノママ2) [2005.09] [TOP] [寄り道] [廃線Web] [プロローグ]
<猪苗代森林鉄道の終点> [2006.08加筆・修正]
古い軌道跡を探索するにあたり、起点終点の確定と確認は必須である。
起点は「猪苗代駅」と明記してあるのだが、どうも終点が不明だ。
古い地形図や「MANUAL9」では中ノ沢を横断する[B地点]が終点として描かれているが、
沢には今でも橋台が残り、更に東にも道床が伸びている。
この地形図が発行された時期には既に中ノ沢から東の部分は廃止されていたのかもしれない。
それでもやはり元来の終点は気になる。
<証言>
第三次探索の際、小野川湖畔探索路(軌道跡に重なる)にどんな遺構が残っているのか、
何かしら情報が得られることを期待して裏磐梯ビジターセンターを訪れた。
本来は登山や自然観察のガイドを主旨とする方に、とっくに廃止された森林鉄道の遺構に関して
質問するなど甚だ失礼なのであるが、実に親切に、また想像以上に詳細に教えて頂けた。
ルートの他、橋台、石垣、枕木、碍子など、期待以上にお詳しく驚かされた程であった。
当然、終点についても伺った。
T 「終点はデコ平のどの辺りだったんですか?」 既に決め付けていた。
ガ 「いえ、もっと上ですよ」 うんうん、そうか、あり得る。二十日平辺りかな?
ガ 「中津川上流のヤケノママ、っていう所から始まっていたんですよ」 え!? 私は絶句した・・・。
ヤケノママ・・・・行った事はないが、聞いた事はある。河原から温泉が湧出している所らしい。
「中津川上流」というより、イメージは標高2000mの「吾妻山山頂直下」に近い。
場所はここである。
標高約1500m。中津川を遡上すること8時間で達することができる・・・片道8時間である。
これはイケナイ。「行ってみたい」などど軽々しく口にするような場所ではない。
沢登りは登山技術の中でも高度な技だ。沢を泳ぎ、滝を巻き、休みなく登って8時間である。
廃道と化した軌道跡を辿ったなら、どれほどの時間を要するやら想像もできない。
<地形図>
手元に昭和57年発行の古い登山地図がある。
地元の新聞社が発行した「福島県万能地図」に予約特典として付属していたもので、
製作は「昭文社」とあるので「山と高原地図 磐梯・吾妻」と同じものであろうか。
中津川東岸に赤い点線が引かれている。上記、片道8時間掛かる中津川林鉄跡を辿って遡上するルートで、
これは現在の登山地図にも描かれている。
そしてこの地図には西岸にも川に平行して赤い点線が記されている。これが軌道跡という事になろうか。
このルートは最近の地図からは消されている。というか、この地図以外で見たことがない。
最後に人が通ったのはいつのことやら・・・。
実は以前、デコ平から中ノ沢を越え、二十日平の南を横断して中津川に出たことがある。
このルートは現在の地図にも載っており、遊歩道として整備されたようであったが、
私が訪れた時には廃されて久しい様子であった。
そのルート西端の一部が、軌道跡と重なっているようだ。
真偽のほどは如何だろうか・・・。
これが前述した古い登山地図である。点線は「難路」の意。
中津川東岸に最近の地形図にはない登山道が描かれている。
しかも等高線に沿って蛇行しながらゆっくりと緩やかに・・・。
私はこれを軌道の痕跡ではないかと考えたわけである。
その上でこんな想像をしてみた。
中ノ沢より上流部分で路線の崩落が発生したが復旧を断念、放棄。
その代替路線として対岸に中津川森林鉄道を設置した、と。
余りにも山深く、そして長い軌道跡を歩く人もなくなり、
やがて笹に埋もれて、地図からも消えたのではなかろうか。