道具の話12・探検の本(服部文祥)   2015.08     [TOP]  [物欲]  管理用


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2015.08 

  2011年8月 No.9   サバイバル登山家 サバイバル登山入門 ツンドラ・サバイバル
  「mono STYLE OUTDOOR」(モノ・スタイル アウトドア) No.9  2011年7月発売 ワールドフォトプレス  
  モノ・マガジンの別冊として、かつて出版されていたムック本、とのこと。  
  「モノスタイル的な新しいOUTDOORを提案するアウトドアスタイル専門誌」だそうである。  
  ------- なんかチャラい臭いがプンプンしてくるコピーですな・・・。  
  そんな本をなぜ買ったのかというと、冒険家・服部文祥さんの装備について特集されていたからである。  
     
  服部さんについて自分のアタマを整理するのも兼ねて、時系列順に書いてみよう。  
  2010年10月、TBS「情熱大陸」を見て初めて彼を知る。 良くも悪くも大変な衝撃であった。  
  自宅居間の脇に、切断されたイノシシの頭部がゴロンと無造作に転がっている。  
  しかし、妻や幼い子供たちは気にする様子もない。 それが日常だからなのか、特に関心がないようだ。  
  真冬の奥秩父に猟銃を携えて入る。 休憩中、急に現れたイノシシを追い、銃を握って雪の上を裸足で追い駆けるが、獲り逃す。  
  また、雪の上に点々と付いたシカの血の跡を追うが、なかなか見つからない。  
  崖の途中に引っ掛かっているシカを見つけ、雄叫びを上げながら駆け下り、「焼肉だーっ!!」と小躍りする。  
  早速雪の上で解体し、生肉を喰らう。  
  夏の南アルプスでは、誰も入らないような険しい沢を登っていた。  
  「足手まといにならないならば」という条件で、テレビ局側の同行が許された。  
  テレビクルーでは付いて行けないので、カメラをベテランの登山家に託しての取材となった。  
  途中、イワナを釣り、カエルを食いながら奥へ奥へと沢を詰めて行く。  
  しかし、滑落。 30m下の沢に落ちてしまう。  
  次に画面に写った服部さんは頭から血を流し、全身ずぶ濡れで膝を抱えて震えていた。 実は肋骨が3本折れていた。  
  普段は単独行なのだが、たまたまテレビ取材で同行していた登山家に救助され、応急治療を施され、現地に一泊して翌朝一緒に下山した。  
  テレビの取材依頼がなければ、その取材を断っていれば、死んでいてもおかしくない事故であった。  
     
  番組では服部さんの著作も紹介されていたが、読んでみようとは思わなかった。  
  価値観が合う合わない以前に、住んでる世界が違い過ぎた。 ------ それが5年前。  
     
  次に名前を見たのは数ヶ月前のこと。 高野秀行X角幡唯介対談集「地図のない場所で眠りたい」だったと思う。  
  やばい、内容を覚えてない・・・。 でも、「ああ、情熱大陸の人か」と思い出し、読んでみようかな〜、とやや食指が動いたのだった。  
  (2015年の正月にTBS「クレイジージャーニー」に出演した際も見ていたが、その時は「あー、あの」とはならなかった。)  
     
  そしてつい最近、服部さんが主役のドキュメント番組が放送されることを知り、  
  それほど期待せずに見てみたらめちゃくちゃ面白かったので、「こりゃ〜、ちゃんと著作を読まなくてはイカンな」となったわけである。  
  その番組はNHK-BS「地球アドベンチャー 〜冒険者たち〜」という3回シリーズで、  
  その1回目が「北極圏サバイバル ツンドラの果ての湖へ 〜登山家 服部文祥〜」だったのだ。  
  ちなみに2回目は「南米ギアナ高地 謎の山 未知の民 〜関野吉晴〜」で、「あ〜、グレートジャーニーの人!」で、  
  3回目が「原始のヒマラヤを撮る 〜写真家 石川直樹〜」で、こちらは「最後の冒険家」が既読であった。  
  結局、3編とも見てしまった。 私は知らなかったのだが、これって再々放送だったのね。   
  最初の放映は2014年1月だった。 一年半も前ではないか・・・。  
     
  番組の中で服部さんはマスを釣り、同行者が狩ったトナカイを食べながら、目的地を目指して旅をしていた。  
  例によって焚き火がメインだが、緊急用なのかSOTOのガソリンストーブも携帯していた模様。  
  クッカーやブキは、「情熱大陸」が放映された5年前当時と同じものを使い続けているようだった。  
  つまり、海外でも"服部流"を貫いているわけだ。 流石である(笑)。  
     
  ここからやっと、表題の本の話。  
  特に服部さんの本を探していたわけでもないのだが、古書店で偶然このムックを見つけ、100円だったので買った。  
  カラー7ページの特集なので、まあまあ情報量が多い。  
  しかし、タープやシュラフ、ザックについては詳細だが、クッカーやブキなど小道具に関して素っ気ないのは編集者の趣味なのだろうか。  
  道具箱やウエストポーチを紹介してるのに、肝心の中身については突っ込んでくれないし。  
  メーカー不明のコンパスが入ってることは分かった。  
 
 
  服部文祥さんが使っていると思われる山道具  
  廃版       ・チタンのクッカー

・金属製の箸

・金属製のレンゲ

・包丁

・木製の椀

DUG
焚火缶S/Mセット
シルキー
ゴムボーイ
荒目・240mm
SOTO
MUKAストーブ
本体
SOTO
広口フューエルボトル
700cc
  スパイダルコ
エンデューラ
直刃・黒
       
たぶんS (1160cc) たぶん       たぶん        
                   

  「Fielder vol.22」特集:道具の力にて、服部さんの山道具も紹介されている模様   ※追記・紹介されてたのは釣り道具でした…   中綴じ 隔月刊
カメラ目線の服部さん     鹿を担ぐ服部さん   「道なき道を行く」 「野営と野宿」 「焚き火の達人になる」
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Fielder vol.22     Fielder vol.19   Fielder vol.20 Fielder vol.17 Fielder vol.15
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2015.09 

    2012年11月 No.13  
  「mono STYLE アウトドア」(モノ・スタイル アウトドア) No.13  2012年11月発売 ワールドフォトプレス  
  服部さんとは全く関連がないのだが、同じ雑誌なので便宜上ここに加える。   
  古書店で100円だったので購入。 なぜか「アウトドア」とカタカナに変わっていた。  
     
  コールマン製のアメリカ軍用ストーブ(ボロボロ)、ニュージーランド生まれの焚き火で沸かすケトル・THERMETTE(ボロボロ)。  
  この、冒頭に出てきたボロ道具2種に"やられた"。  
  特に後者は、「どんだけ苛め抜いたらここまでボロくなるんだ」ってくらい使い込まれてボロボロになっており、心が躍らされる。  
  他にも、焚き火道具とかランタンとか、なかなか興味深い特集が組まれております。  
  ヨーロッパの職人によって作られる真鍮製のオイルランタンには憧れるけど、どれもこれも高価ですなあ・・・。  
     
  前記の通り、商品カタログ的な写真ばかりでなく、個人が現在使っている道具の写真も使われていてニヤニヤする。  
  そのため、「使い込んだものを撮影しています」なんて注釈がいちいち付いてるけど(笑)。  
     
  グラビアがメインの雑誌なので、パラパラめくりながらボンヤリと楽しく鑑賞できる。 コスパに優れたお買い物だった。  
 
 
  この本で紹介されている山道具  
snow peak(スノーピーク) FIRESIDE(ファイヤーサイド) Kelly Kettle(ケリーケトル) MONORAL(モノラル) BioLite(バイオライト) Aladdin Montle Works
焚火台 L  グランマーコッパーケトル スカウト アルミ 1.2L WireFlame キャンプストーブ アラジンランプ

FEUER HAND(フュアーハンド) PETROMAX(ペトロマックス) キャナルシップ D.H.R D.H.R E.Thomas & Williams
灯油ランタン HK500 ニッケル 山小屋ランプ 船舶キャビン吊りランプ カーゴランタン フルブラス オイルランプ
           

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2015.10 

         
  「サバイバル登山家」 服部文祥 みすず書房   平成18年(2006年)  
  Amazonのレビューを見ると、賛否両論である。 そして「否」の内容がなかなか酷い。  
  批判を通り過ぎて、もう誹謗中傷、人格否定にまで達している評もある。  
  彼らは何ゆえここまで服部文祥を否定し、嫌悪するのだろうか。  
  服部さんの著作やエッセイをいくつか読んでみたのだが、結局この処女作に尽きるな、と思い至った。  
     
  バッシングの理由は、登山家の山野井泰史によって書かれた、この本の序文に暗示されているように思う。 一部引用する。  
  『その服部文祥を際だたせている第一の印象は、あのギラギラした目と強がりとも思える言動だろう。  
  ときどきいっぷう変わった登山をしては、それを挑発的な文章にして雑誌に載せ、われわれを楽しませてくれる。』、とある。  
  "ギラギラした目、強がりとも思える言動、挑発的な文章"、、、、序文なわけだから、これらは全て褒め言葉のはず(笑)  
     
  本作を初めとする自身の著作や雑誌の表紙に登場する彼は常にカメラ目線であり、その目は読者を威嚇し、挑発しているようだ。  
  偶然ではなく意図的な演出だと思われる。  
  「否」の人々は、この自己主張の強い、野生的な目や顔がまず生理的に気に入らないのであろう。 筆者の思う壺である。  
  『いっぷう変わった登山』についても、「ひとりよがり」「全然サバイバルじゃない」「法を犯している」と批判する。 筆者の思う壺である。  
  彼が書く『挑発的な文章』に触れて頭に血が上り、嫌悪感を丸出しにして誹謗中傷や人格否定に走る読者たち。 全て筆者の思う壺である。  
  ・・・・と、勝手に妄想。  
     
  私は面白いと思ったけど、不愉快に思った人は二度と彼の本を読まなきゃいい。 だって教科書じゃないんだから。  
  でも、服部さんがやってることって、文章よりも映像、静止画よりも動画で見た方が圧倒的に面白いんじゃないかかろうか?  
  定期的に前述の「情熱大陸」「地球アドベンチャー」のような、密着ドキュメント番組を制作してくれればいいのに。  
  でも、CS辺りの有料番組だと、既に似たような番組がありそう。  
  上に羅列した「Fielder」には、昆虫やらカタツムリやらを食うDVDが付属していると言うから、こちらもなかなか過激で面白そうだ。  
     

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2015.12 

           
  「サバイバル! 人はズルなしで生きられるのか 服部文祥 ちくま新書   平成20年(2008年)  
  実は、上記のデビュー作「サバイバル登山家」以外にも、「狩猟サバイバル」「百年前の山を旅する」も借りていたのだが、  
  どうにも退屈で、2冊とも途中で読むのを止めてしまった。  
  そんなわけで、服部作品4冊目となるこの「サバイバル!」も、他の本を借りる"ついで"という扱いだった。  
  しかし、どうしたことか、これが面白かったんだな。  
     
  今回は、日本海側の駅から徒歩で出発し、北アルプスを越えて上高地に達する山行記録がメインになっている。  
  やってることは今までと同じなのだが、書き方を多少変えており、他の著作と違って引き込まれた。  
  サバイバル登山とは何か、なぜやるのか、装備の詳細、などが丁寧に、細かく述べられていて飽きることなく読める。  
  日の出から日没までの行動や、毎日変化する衣食住の詳細な記述が興味深く、よりリアリティが増しているようだ。  
  他の本は淡々とした行動記録に徹した味気ない内容だったが、この内容なら擬似体験が楽しめると思う。  
     

          2015年4月号 2016年1月号  
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2015.12 

        瑛太さんが同行 2015年度 ベスト10  
  「サバイバル登山入門」 服部文祥 デコ   平成26年(2014)  
  Amazonのレビューの評価がかなり良いので気になっていたのだが、2900円(+税)とそれなりのお値段なので気安く手を出すわけにも行かず、  
  図書館にて"在架"になるのを待っていたのだが、人気があるようで、なかなか借りられずにいた。  
  もともと登山が趣味だった俳優の瑛太さんが、服部さんの冬山狩猟に同行する企画が登山誌「岳人」(2015年4月号)に載ったり、  
  また、瑛太さん自身がSNSでこの本を推薦したことも、人気を加速させた要因かも知れない。    twitterはこちら  
  最近では、「本の雑誌」にて「2015年度 ベスト10」のひとつにも選ばれている。  
  どうやら、"その筋のひと"だけではなく、一般の人にも浸透しているようだ。  
     
  表紙は、例によって挑戦的なカメラ目線の筆者である。  
  クマの毛皮を被った筆者が「ガオー!」ってな感じのポーズをしている。 そんな、一見さんを舐めてるようなスタンスも相変わらずだ。  
  当然ながら、ブレることなく独自の「サバイバル登山論」を展開しているので、過去作を受け入れられなかった人からは反発を喰らうだろう。  
  しかし、そういう人はもう二度と服部作品を読まないだろうから、良い評価ばかりでレビューが埋まることになったのかも知れない。  
  私は大変興味深く拝読し、勉強にもなりましたけどね。  
     
  オールカラーで写真・イラスト・地図が多数。  
  「サバイバル登山」をそのまま真似する人はいないだろうが、日帰り登山のハイカーでも参考になる点が多い。  
  使い込まれた道具の写真が数多く掲載されており、なぜそれを選んだのかの説明もある。  
  例えばナイフひとつにしても、長さや厚さ、材質や価格を考慮して選んでいることが分かる。  
  現在愛用のコンパスはSILVA(シルバ)のNo.7であった。    コンパスの一覧はこちら  
  上記の「mono STYLE OUTDOOR No.9」掲載のコンパスとは異なるので、最近新調したようだ。  
  ノコギリも、折り畳み式から固定式に変更されていた。  
  また、ハイマウントのフォレストヒル キャンドルランタン(シルバー)を使っていた点は意外だった。  
  日があるうちに行動し、暗くなったら寝るのが「サバイバル登山の基本」としながら、  
  暮れるのが早い秋冬や、小屋の中では使うことがあるのだそうだ。    レポートはこちら   キャンドルランタンの一覧はこちら  
  木製の椀は漆塗りで、ご飯を盛って食べたり、フタをして弁当箱代わりに使っていた。  
     
  特異なのは、猟銃の所持許可を得る方法や、銃の撃ち方、狙う部位、なんていう項目があったり、  
  シカやイノシシ、エゾライチョウやモグラの解体方法などが載っている点であろうか。  
  特に、シカの解体は本書のメインのようで、30ページに渡って多数のカラー写真付きで詳細に解説がなされている。  
  シカの内臓を取り出したり、生皮を剥ぐシーンはなかなかグロいですな・・・。  
  あー、シカの頭を丸ごと塩茹でにし、脳を幼い娘さんにスプーンで食わせているショットもありまする。  
 
 
  服部さんが使っている山道具  
SILVA(シルバ) ハイマウント 木屋 シルキー ドクターヘッセル 日の出光学
取扱いなし
No.7NL フォレストヒル
キャンドルランタン
No.160 ペテ
エーデルワイス 150mm
ゴム太郎 荒目・300 ポイズンリムーバー ヒノデ 5×20
ブラウン

             
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2016.03 

           
  「ツンドラ・サバイバル」 服部文祥 みすず書房   平成27年(2015)  
  前述したように、"サバイバル登山日記"にはちょっと食傷気味。  
  "文章で表現するサバイバル"というのは非常に地味、かつワンパターンということに気付いてしまった。  
  しかしこれは筆者の表現力の優劣なのかも。  
  角幡さんは謎解きや風景描写があるけど、服部さんには謎がないし、風景描写には興味がないみたいだ。  
  高野さんは辺境の現地人と生活を共にするので、孤独感がなく、民俗学的な面白さと明るさがある。  
  服部さんは基本的に単独行動なので、その点バラエティに乏しくなる。  
     
  しかし、この本にはこれまでとは違う、2つの注目ポイントがある。  
  ひとつは、TBS「情熱大陸」にて放映された"滑落事故"の現場を再訪して、当時の状況を自己解説するところと、  
  もうひとつは、NHK-BS「地球アドベンチャー」の裏話が語られているところである。  
  "TBS"の件では、なぜこのルートを選んだのか、それほど難しくないのに、なぜ落ちたのか、と振り返る。  
  結局、「テレビの取材が付いていたせいで、冷静さを失っていたのかも」と考える。  
  気持ちは分るが、それを言ってはいけないのではないか、とも思う。  
  胸のケガはかなり酷く、まさに危機的状況であったようだ。  
     
  "BS"は、NHKの撮影スタッフや、ロシア人の現地ガイドをぞろぞろと引き連れた"大名行列"になった、と自虐している。  
  テレビ的な演出があったことや、ロシア人たちのあざとさ、いい加減さも語られており、下衆な興味を満たしてくれる。  
  途中で偶然知り合い、一緒に旅をすることになった現地の遊牧民には心底惚れてしまったようで、  
  その生活に憧れるあまり、ロシアのツンドラ地帯に移住することも半ば本気で考えているようだった。  
  服部さん、何かを見つけてしまったのかも知れない。  
     

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