道具の話11・探検の本(角幡唯介)   2015.08     [TOP]  [物欲]  管理用

           

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2015.04

    2011年12月号   2015年5月号
  「PEAKS」 2011年12月号 竢o版社  
  当サイトではお馴染みとなった竢o版社が発売しているアウトドア月刊誌である。  
  この手の雑誌は全く購読してないのだが、「道具一覧1・カトラリー」を作成する時に「カトラリー」で検索していてヒットしたのがこの本だった。  
  「マウンテンギア研究所」という山道具に関する連載があり、本号では「マルチツール&カトラリー」の特集だったのでヒットしたのだろう。  
  月刊誌の特集だから、どうせ商品カタログ的な提灯記事だろう、と一瞥・・・・・しかし、ん? 「書を読んで山に登ろう」とな?  
  山を舞台とした本の紹介がメイン特集の号でもあった。 う〜む、こちらの方が興味深い。  
  表紙の片洞門=黒部の「水平歩道」の写真も気に入った。  
  ちなみに、「山登りをやってみたいと思っている20〜30代、登山雑誌になじめない40〜50代の人への情報誌」、だそうである。  
     
  Amazonで中古を見ると、1円+送料で「非常に良い」があった。   
  こりゃあ楽勝と思い、さらに安く買うために古書店の100円コーナーを探して回ったが、見つからず。  
  どうしようかなー・・・と迷ってるうちに「非常に良い1円」が売れてしまった。  
  再び1円で買えるようになるまで半年も待たされるハメになったが、今度こそ買い。  
  まあ、届いた本はとても「非常に良い」とは言えないような、ちょっとガッカリな状態だったけどね・・・。  
  表紙の上部にツツーッとナイフで切った跡があったのだ。  
     
  「マルチツール&カトラリー」特集は想像した通り、薄めな内容だった。 使い込んだ道具の写真は皆無で、単なる商品の羅列。  
  しかし、メイン特集の「書を読んで〜」はとても充実した内容で、実に大量に紹介されており、そのうちいくつかは読んでみたくなった。  
  新田次郎作品が多いことに辟易するが、まあ、当然ですわな。 この分野では他の追随を許さない巨匠だし。  
  しかし私は「アラスカ物語」くらいしか読んでない。  
  「水平歩道」のレポートも面白かった。  
  歴史や開削の経緯を踏まえての現地レポや遺構の解説など、まさに「廃道レポート」的な展開に引き込まれた。  
  行ってみたいなあ。。。  
     
  他の特集や連載もなかなか読み応えあり。 月刊誌であるが、読み終えたら捨てるというには惜しい本であった。  
  ほぼ全ページがカラーだし、月刊誌というよりムック本だね。 こんな内容の本を毎月毎月出すって、大変な労力だろうなあ。  
  これを書いてる時点での最新号は5月号で、特集は「みんなのテント泊スタイル」。  
  『テント泊が得意な達人たちの「アイデアある衣食住」や「テント泊に欠かせない愛用品」を一挙にご紹介』  
  愛用品の紹介だと? おおおおっ!  
     

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2015.05

  空白の五マイル 雪男は向こうからやって来た アグルーカの行方  
  「空白の五マイル」 角幡唯介 集英社   平成22年(2010年)
  上記の月刊「PEAKS」の連載にて著者自身を紹介する記事があり、さらに書評でも最新作が取り上げられるという、二重のプッシュに遭遇。
  まず著者自身に強い興味を持ったのだが、恥ずかしながら、これまで本のことも著者も全く知らずにいた。
   
  チベット奥地に、深く、長く、険しい渓谷がある。
  100年以上も前から各国の探検隊が繰り返しアタックしたが、誰も辿り着けなかった区間が「五マイル」だけ残された。
  戦後も最新装備のアメリカ隊、中国隊、日中合同隊などが「空白」を埋めようとチャレンジしたが、やはり辿り着けず、死者も出た。
  そんな極限の秘境に著者はたった一人で入り、ついに踏破に成功する。
  その顛末を描いたノンフィクションである。 いやー、そんな人がいたんだね。 しかも日本に・・・。
   
  こんな大冒険の記録がつまらないわけがない。
  あとは著者の文章力次第だが、Amazonのレビューを見る限り、かなり好評の模様。
  これはもう買うしかない。 文庫版では著者撮影のカラー写真が省略されているとのことなので、単行本の中古に絞る。
  「安い」のハードルをいくらに設定するか考えているうちに図書館に行く必要が生じ、ついでに借りてきてしまった。
   
  ------ あ〜面白い。
  駆け足で読んでしまってはもったいないので、数日に分けて少しずつ、ゆっくり読むように努めたのだが、
  それでも4日で読み終えてしまった。
  私も「ひとりで探索」なんてことをしており、山中で道に迷ったり、ケガをしたり、飲み水が切れたり、シャリバテしたり、、、と体験してきたが、
  当然ながら、そんなものの比ではない。 なんと言っても著者は「バケモノ」の巣窟、早大探検部のOBだからな・・・。
  元は新聞記者というだけあって、チベットに暮らす人々への愛情と、中国共産党への憎悪が興味深くもあった。
 
  さて、道具マニアとしては彼の装備が気になるところだが、「Number DO」にて写真付きで紹介されている模様。
2012年6月     エッセイ集 →その文庫版 高野秀行と対談
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Number DO     探検家、36歳の憂鬱 探検家の憂鬱 地図のない場所で眠りたい
           
  Number DO」 Summer 2012  2012年6月号 文芸春秋
  ブックオフに行ったら置いてあった。 「よし!買うぞ! でもちょっと高いな。 取り合えず内容を確認しとくか」と、買う前提で立ち読みする。
  角幡さんの装備がカラー見開きで紹介されていた。 こういう企画は大好きである。
   
  クッカーはチタン製だろうか? 内側は焦げ付き、外側は焚き火の煤で汚れ、全体が真っ黒になっている。
  フタ兼フライパンはベコベコに凹み、ハンドルが片方取れてしまってるようだ。 なんとも凄まじい、百戦錬磨を伺わせるクッカーである。
  しかし、説明には「鍋3点」とあるだけで、残念ながらメーカーも商品名も不明。
  同様に、キャノンのデジカメも説明には「カメラ」とあるだけ。 「鍋」とか「カメラ」とか、そんなの言われなくても見れば分かります。
  バーナーもカトラリーもなし、ランタンなし、ナイフなし、コンパスなし、腕時計もなし・・・・。
  そういった、当サイト的にはとても重要な小道具たちが、ことごとく省かれてしまっている。
  「どうしてこの道具を選択したのか」といった参考になりそうな解説もなし。 
  ---------- なんだこれ?
  「角幡さんって、山で何連泊もするような探検には鍋を持って行くのか〜。さすがだな〜」 
  「なるほど、カメラを持って行けば記録が残せるな。その発想はなかった。真似しよう」
  とでも言って欲しかったのだろうか? とんだ"角幡の無駄遣い"企画ですなあ。 残念。。。
  もちろん買わずに店を出た。
   
  どんな客層を想定した雑誌なのか、よく分からんので調べてみたら、
  『スポーツ雑誌「Number」編集部が、DOスポーツを愛するすべての人々に送る雑誌です』、とあった。
  いわゆるスポーツ総合誌なのであって、登山やアウトドアに特化した雑誌ではなかったのね・・・・内容薄いわけだ。
  危うく買ってしまうところだった。 早く100円にならないかなあ。
 
  「アウトドア マインド」(2012年6月発売 毎日新聞社)によると、チタンクッカーセットは6、7年前に買ったもので、
  「富山駅前の登山用具専門店のチロル」とのこと。 小売店オリジナルなのかも知れない。
 
スノーピーク (snow peak) 純チタン食器3点セット STW-001T
 
意外と単純に、これなのかも知れない。
 
 
  2016.09追記
  100円になったので買ってきた。
  表紙は服部文祥さんだったのね。 隣のQちゃんにばかり目が行って、買うまで気付かなかった(笑)。
  彼が愛用する山道具が紹介されているが、やはりアッサリ味であった。
  角幡さんが出てるのは、「大人の山道具の選び方」のコーナーであった。
  他に2名の方の山道具が紹介されていたが、竢o版の山道具本と比べてしまうと、薄味なのは否めない。
  まあ、初心者向けだからね。
   
  また、「私が山に登る理由」のコーナーに市毛良枝さんのインタビューが載っていた。
  これまで、「登山を始めたのは、ドラマで田部井淳子さん役を演じたのがきっかけ」、と語っていたように記憶していたのだが、
  それとは全く別な理由を語っていて驚いた。
  「父の主治医に勧められて」とのことだった。 う〜ん・・・。
   

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2015.05

  空白の五マイル 雪男は向こうからやって来た アグルーカの行方 漂流 New!
  雪男は向こうからやって来た 角幡唯介 集英社   平成23年(2011年)
  前作「空白の五マイル」が大変面白かったため、すぐに次回作も借りてきて、あっという間に読了。
  書いたのはこちらが先だが書籍化されず、後から書いた「空白の〜」が受賞したため、先に本になったらしい。
  タイトルの通り、ヒマラヤに棲息すると言われる雪男を捜索した男たちを描いたノンフィクションである。
  まあ、"雪男"と付いただけで、途端に胡散臭い本になり下がりますわな。
  宇宙人がどうたら、ネッシーがこうたらと同列のトンデモ本の類だと思いますもの・・・・私もそうでした。
  そして著者自身もそうだったのだ。
   
  雪男になんてまるで興味がなかった著者が、ひょんなことから雪男捜索隊に同行することになり、
  下調べのために雪男に関する本を読んだり、目撃者たちを取材して行くうちに、著者自身も雪男にのめり込んで行く。
  正確に言うと、著者は「雪男はいる」と確信したわけではなく、「雪男の実在を信じている人々」にのめり込んだ、ということになろうか。
   
  ヒマラヤの現地では数十日の間、岩と雪しかない無彩色な斜面を一日中観察して過ごし、
  雨や霧が深い日はテントの中でゴロゴロして時間を潰す、という単調な日々が続く。
  しかし、成果を得られないまま捜索隊が帰国することになると、著者はひとり現地に残って単独捜索を続行することを決断する。
  まさに、「ミイラ取りがミイラになる」を地で行くような展開である。
  雪男の存在を鼻で笑ってた山男たちが次第に取り憑かれてゆき、彼らの影響で著者自身も取り憑かれるようになり、
  そして、その物語を読んでる私もグイグイと引き込まれてゆく。
  存在してほしい、目の前に現れてほしい、写真やビデオに写ってほしい、、、そう願いながら読み進むようになっていた。
  いつの間にか私も雪男に取り憑かれていたようだ。
   

             
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2015.06

  最後の冒険家 最後の冒険家   探検家、36歳の憂鬱 探検家の憂鬱
  「最後の冒険家」 石川直樹 集英社文庫 平成23年(2011年)  /  「探検家、36歳の憂鬱」 角幡唯介 文芸春秋 平成24年(2012年)
  以前、「5・本とナイフ」にて開高健の「生物としての静物」を取り上げた。
  その際、Amazonに関連本として表示されたのがこの「最後の冒険家」だった。
  こんなことはまずないのだが、内容よりも表紙に惹かれて欲しくなってしまった。 なんとも分かり易い物欲ですな(笑)。
  単行本と文庫版があり、惹かれたのは文庫版の方。 朽ちて有機物のようになった一眼レフカメラの肖像が表紙だった。
  ちなみに、文庫は小さくて持ち運びに便利なのだが、単行本にはある写真ページが省略されたりする場合もあるので要注意。
  これには文庫版にもカラーページがある。
   
  冒険家・写真家である著者は、気球冒険家・神田道夫の「気球による太平洋横断」という企画に同行する。
  しかし、2人が載った気球は太平洋に落ちてしまい、8時間漂流した後、貨物線に救助される。
  神田は再度、今度は単独でチャレンジするが、ついに行方不明になってしまう。 今も見つかっていない。
  神田が行方不明となった年の夏、日本のとある離島に気球のゴンドラが漂着する。
  それは、かつて石川さんと神田さんが太平洋に落ちた時に乗っていた、貯水タンク製のゴンドラだった。
  その漂着したゴンドラの中から発見されたのが、表紙にある石川愛用のカメラ・EOS kissなのだった。
   
  以上が表紙についてのお話。 以下、内容について語りたいのだが、実は買って3年経過してるのに未だ読み終えてない。
  緊張と弛緩がないというか、抑揚がないというか、ワクワク感がないというか、淡白というか・・・。
  最初は5、6ページ読んだところで飽きてしまって放置。 
  やや置いて再読したが、やはり続かず。 2、3章飛ばし、スリリングな場面だけ選んで一応の"読了"とした。
   
  そのまま放置していたが、最近ハマってる角幡唯介さんのエッセイ「探検家、36歳の憂鬱」にこの本が出てきて驚いた。
  2人とも冒険家だし、石川さんはこの「最後の冒険家」で、角幡さんは「空白の五マイル」で開高健ノンフィクション賞を受賞してるから、
  別に意外な組み合わせでも何でもない、当然と言えば当然のことかも知れない。
   
  しかし最終章では、彼らのもっと深い関係が語られる。
  2人は学生の頃からの知り合いであり、しかもなんと神田さんは太平洋横断の同行者として角幡さんを誘ったことがあったという。
  こんな繋がりがあるとは全然知らずに読んでいた。
   
  筆者は、徐々に危険度の高い冒険に嵌って行く神田の心理を考察しつつ、同じ深みを覗いている自身の現状と行く末に思いを馳せる。
  危険な冒険をして、それを本に書いて売り、金銭を得て生活する、、、という「職業」が孕む矛盾を自虐を交えて吐露し、
  タイトル通り、「探検家の憂鬱」が正直に語られる。
  死にそうになるような危険な体験であるほど物語としては面白くなるが、実際の現場では危険はできるだけ避けるのが常識だろう。
  よりリスクが少ない方を選択するのが当然だが、逆に危険な方を選んだ場合、想定外のことが発生して面白いことが書けそうだな・・・、
  という誘惑が常に付いて回る。 そんな憂鬱である。
   
  「角幡とは比べものならんわい」と笑われそうだが、私もこの気持ちが少しだけ分かる。
  廃道巡りは以前からしていたが、Webで発表することが前提になってからは、
  撮影の頻度、方法、アングルなどが読者を意識するように変化し、やがて、Web未発表箇所に拘って探索場所を選ぶようになった。
  それまでは、自分の好奇心を満たすのが目的だったから、極端な話、視認さえできれば撮影しなくても良いくらいだったのだ。
  「危険な方が面白い」とは思わなかったが、「多少のリスクを犯しても進もうかな」くらいには変わったような気がする。
  「読者が面白がったり喜んだりしてくれるかも知れない」という麻薬が、危険回避のハードルを下げた場面がなかったとは言い切れない。
  とは言え、昨今のSNSに見られる犯罪自慢のような視野狭窄状態には陥ってない、、、はずだ。
   
  近年はエベレストにすら山頂を目指す登山者で行列ができるらしい。
  命懸けだった北極点や南極点へも、今や豪華客船やヘリコプターに乗って、誰でもさくっと行けるようになった。
  そんな時代における「冒険」とは何なのか、という文脈の中で、石川さんや神田さんの他、野口健さんや栗城史多さんの名が挙げられていた。
  それぞれ、登山会では"異端"とされる人たちとのこと。
  「人と違うことをするヤツは叩く」という島国根性は21世紀の今でも健在なんですかねえ・・・。
  前例がないからこそ面白いのに。
   

            ↑石川直樹の山道具

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2015.07

    アルバム (1992) 1曲参加 (2010)   2016.01
  「ニューギニア水平垂直航海記」 峠恵子 小学館文庫   平成16年(2004年)
  角幡唯介の著作を読んでいると、所々でニューギニアを探検した話が出て来る。
  まだ学生だった角幡さんが、ベテラン"隊長"と、冒険どころか登山経験すらないシンガーソングライターの女性、という珍妙な3人編成で、
  日本から小型ヨットでニューギニアに向かい、ジャングルに囲まれた川を遡上し、高山の岩肌を登る、という長丁場の大冒険だったらしい。
  これだけで面白そうだし、学生時代の角幡さんの状況も興味深くて期待大なのだが、
  残念ながら、まだ書籍化されてないので詳細が分からず、悶々としていた。
   
  ところが、角幡さんと高野秀行さんの対談集「地図のない場所で眠りたい」を読んだら、同行した女性が本にしていることが分かった。
  Amazonを見ると、新刊はなく古本のみ。 レビューを見ると中々好評のようで、なんともハチャメチャな珍道中だった模様。
  調べると地元の図書館にあったので、これを借りることにした。
   
  解説が椎名誠さんだったのでニヤけてしまった。 あの「怪しい探検隊」の隊長だから、最適の人選と言えようか。
  本のタイトルも椎名さんの発案とのこと。 「椎名の本みたいなタイトルだな」と思っていたら当たってた(笑)
  さて本題。 これは"ノンフィクション"と言うより"日記"ですな。 文章もブツ切り、箇条書き。
  途中、「もっと詳しく!」と声を上げたくなる場面が何度もあった。
  だがそれはそれで良かったのかも。 テンポが良いので、一度読み始めると途中で止められなくなってしまうのだ。
  もちろん内容も面白い。
  そうそう、半年もの長期に渡って寝食を共にしていた割りには、"ユースケ"こと角幡さんに関する記述はびっくりするくらい少なかった。
  当時はまだ学生だったし、冒険家、作家として世に出る前のことだから当然か。
   
  海では船酔いに苦しみ、寝不足に悩まされ、毎日何度も嘔吐し、天候や風向きに一喜一憂する。
  上陸後はダニや蚊に悩まされ、信頼した現地人による詐欺や盗難が頻繁に発生し、役人に賄賂を渡す。
  登山中は寒さと過労と高山病に苛まされつつ、なんとか登頂に成功する。
  そんな状況だろうが、若い独身女性だろうが、食う、寝る、出す、という作業が毎日繰り返されるのは必定。
  筆者はそれを隠すこともせず、逆に面白おかしく明け透けに語っている。
  喜怒哀楽を正直に吐露しつつも、常に前向きな彼女の性格が読者までハッピーにしてしまうのだろうか。
  なんとも爽快な読後感を味わうことができた。
   
  ちなみに角幡さんは、隊の目標が「未踏の最高峰踏破」から「絶滅したはずのタスマニア・タイガーの発見」へと、
  転換されたことに納得が行かず、途中で帰国してしまっている。 「そんなもの、生き残ってるはずがない」と達観しているのだ。
  一方、藤原一孝"隊長"は現在ニュージーランドに移住し、今でもニューギニアでタスマニア・タイガーを探しているんだそうな。
   
  角幡さんもこの冒険行を書籍化する予定があるそうで、いつになるのか分からないが楽しみである。
   

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2015.07

  空白の五マイル 雪男は向こうからやって来た アグルーカの行方 漂流 New!
  アグルーカの行方 角幡唯介 集英社   平成24年(2012年)
  ずっと貸出中だったが、やっと借りられた。 
  のんびり読もうと思っていたのだが、2日で読み終えてしまった・・・。 よって寝不足である。
   
  実を言うと、読み始めは面白かったのだが、すぐに退屈に感じてしまった。
  全滅したフランクリン探検隊の足跡を追って、極寒の北極圏を徒歩移動する2人。 
  そこに乱氷帯、凍傷、空腹、シロクマの接近、など、次々と生命に関わる危機が訪れるのだが、
  毎日のようにそんな記述が繰り返されると「またか・・・」になってしまい、それらの危機的状況が「日常」に思えてしまったようだ。
  なんとまあ、読者ってのは残酷で強欲なんですな。 
  もっと過酷な状況に陥ることを、危険なハプニングが起こることを、無意識に期待してるのだ。
  アタマが麻痺した私の興味は、フランクリン隊全滅の謎解きや、生存者の有無に移行していった。
  角幡さんらの行動日記は斜め読みし、当時の資料や証言を元にした推測を重点的に読んでいったのだが、
  それでもどんどん引き込まれて行き、途中で止めることができなくなってしまった。
   
  もちろん、斜め読みできなかったエピソードもある。
  ある日、飢えた彼らは食べるためにジャコウウシを撃ち殺す。 
  しかしそれは母牛で、何が起きたのか理解できない子牛は、解体される母親の周りをずっとウロウロしていた。 群れからもはぐれた。
  「さて、肉を持って帰るか」という時、激怒した子牛が追撃してきた。 彼らは仕方なく子牛も射殺する。
  角幡さんがこの出来事を、ことのほか具体的かつ生々しく書いたのは、当然意図的だろう。
  トレイに入れられ、きれいに並べられたスーパーの肉しか知らない、私を含む現代人の偽善性を嗤っているのだ。
  百数十年前、遭難したフランクリン隊は、斃れた仲間の肉を食って生き延びようとしていた。
  どちらも読んでいて全然楽しくない話なのだが、嫌でも人間の「生」への執着(いや必然か)を考えさせられてしまう。
   
  この件は"サバイバル登山家"の服部文祥さんを連想させた。
  米、塩の他、猟銃を持ってひとり山に入る彼にとっては、むしろこれが「日常」なのであろう。
  服部さんについては、近日中に別項で触れることになると思う。
   

         
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2015.09

    2012年6月  
  「アウトドア マインド」 2012年6月発売 毎日新聞社
  図書館のアウトドアコーナーで偶然見つけた。
  「ボーイスカウト日本連盟創立90周年記念」、とのことだが、内容はそんな堅苦しいものではなく、
  "冒険業界"の人たちが、自分の生い立ちやアウトドア体験を語るカラーグラビアがメインである。
   
  注目は、彼らの愛用品を写真付きで紹介してる点。 
  いずれも使い古してボロボロになった山道具であった。
  登場人物は、椎名誠、石川直樹、関野吉晴、三好礼子、栗城史多、夢枕獏、角幡唯介、大谷映芳、谷口けい、野口健、という面子。
  他にも、野田知佑、風間深志、服部文祥も一文を寄せている。 薄い本のわりに豪華メンバーが勢揃いした、凄いムックなのだった。
   
  椎名さん愛用のナイフはスパイダルコの1001-K エベレストワーカー・セレーション。 「一番手になじみ、切れ味も良い」とのこと。
  銀紙1号を使った高級品で14000円もするが、現在は絶版になっている。
  角幡さんのチタンクッカーはメーカーが不明だったが、6、7年前に買ったもので、「富山駅前の登山用具専門店のチロル」とのこと。
  小売店オリジナルなのかも知れない。
  石川さんのプラウベルマキナ670はフードが変形。 大谷さんのニコンF3Pは角が擦れて、下地の真鍮・チタンが出まくっている。 
  共に凄い風貌だ。
  野口さんは故・植村直己の形見である、ビクトリノックス キャンパーを見せてくれている。
   
  なかなか良い本を見つけた。 買って手元に置いておきたいな。
  2019.11 追記
  「BOOK OFF online」にて200円だったので購入。他2冊と共に店頭受取ナリ。
 
  この本で紹介されている山道具
椎名誠 椎名誠 椎名誠   角幡唯介 角幡唯介   谷口けい   野口健
廃版 廃版 / 廃版 / /
EPIガス
NEO S-1030
mont-bell(モンベル)
チタンカップ450
スパイダルコ
1001-K エベレスト
  snowpeak(スノーピーク)
ギガパワーストーブ 地
ファイントラック
ツェルト2
  MSR
ウィスパーライト
  VICTORINOX
キャンパー

    2010 2011 2012 2016
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2017.09

  空白の五マイル 雪男は向こうからやって来た アグルーカの行方 漂流 New!
  ついに借りてきたぞ! さあ、読むぞ! 
  と、冒頭からテンションがちょっと高めである。 久し振りの新作であるから仕方がない。
  「やっぱり角幡さんは面白い!」と、序章、第一章をハイペースで読み進んだ。
  が、しかし、第二章に入ったとたん、急にブレーキが掛かってしまった。
  「あれ? なんか冗長になってきたな・・・」、と。
   
  第二章以降は、ずっと主人公の遺族や関係者への取材が続く。 そして、民俗学的な解説が始まる。
  で、これが次の章以降も延々と繰り返される。
  そう、この本には角幡さん自身が冒険する場面が全くないのだ。
  「雪男は〜」に例えると、角幡さんによる雪男探検部分を全てカットし、
  目撃者へのインタビューと目撃史・探索史だけで構成し、しかも、そのページを2倍に増やす。
  それが、この「漂流」という本の内容なのだった。
  これは思ったより退屈かも知れないぞ・・・。
   
  とりあえず、つまらなそうな所は飛ばし、面白そうな部分だけを読むことにした。
  面白かったのは、一緒に漂流して救助されたフィリピン人船員たちへのインタビューと、
  主人公が再び漁へ出ることを決めた経緯を探る場面か。
  やはり本人が冒険した物語が読みたいですわな。
   
  ところで、この本の分類なのだが、「557.8」とのシールが貼ってある。
  550は「海洋工学、船舶工学」で、「557」は「航海、航海学」なんだけど、これでいいのかな?
   

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